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4.プライバシー |
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・Muick v. Glenayre Electronics 280 F.3d 741(7th Cir. 2002) |
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<判決日>
2002年2月6日
<裁判所>
第7巡回連邦控訴裁判所
<ポイント>
会社が従業員に貸与していたノートパソコンを捜査機関の押収命令に応じて差し出したとしても、会社は、その従業員の権利を侵害したことにならない。
<要約>
原告Muickは、被告Glenayre Electronics社の元従業員であり、被告は、原告を含む従業員にノートパソコンを貸与していた。被告は、このノートパソコンについて、いつでもその状況等を検査することができると従業員に告げていた。
原告は、児童ポルノ所有の疑いなどで検察庁の捜査の対象となり、検察庁は、被告が原告に貸与していたノートパソコンに対する押収も行った。被告は、検察 庁からの押収命令に基づき、このノートパソコンを検察庁に差し出した。原告は、この被告の行為が合衆国憲法修正第4条に定められた不合理な押収等を受けな い権利を侵害しているとして訴訟を提起したが、連邦地方裁判所は、原告の訴えを棄却した。これを不服として原告が控訴したのが本件である。
連邦控訴裁判所は、会社から貸与されているコンピュータの中のデータについては、そもそも従業員のプライバシーが及ばないこと、被告は、事前に、コン ピュータについて検査することもあると述べており、原告はコンピュータの中のデータについて合理的なプライバシーの期待をすべきではないこと、被告は、捜 査機関の命令に基づいて差し出していることなどを理由として、被告の行為は、合衆国憲法修正第4条に違反しないと判断し、原告の控訴を棄却した。
<コメント>
捜査機関の命令に基づいて会社所有のパソコンを差し出すことが従業員の権利を侵 害することがない点は問題ないであろう。捜査機関の命令がない場合や会社として検査したい場合でも従業員に貸与しているパソコンを検査できるようにするた めには、コンピュータ利用規程を定めておくことが望ましい。
<参考サイト>
Phillips Nizer Benjamin Krim & Ballon LLP
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・University of Evansville, et al. v. Dr. William Felsher 755 N.E.2d 589 (Sup. Crt. Ind. 2001) |
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<判決日>
2001年10月1日
<裁判所>
インディアナ州最高裁判所
<要約>
エヴァンスビル大学の元教授Felsherは、同大学の学長らの個人名を使用し たEメールアドレスを取得し、そのアドレスから他の大学の地位への応募などを行い、また、自分で作ったウェブサイトに彼らの批判などを載せていた。取得し たEメールアドレスは、学長James S. VinsonであるとみせかけるようにJSVinsonUE@aol.comなどであった(UEはエヴァンスビル大学の略称)。
個人名を使用された者と大学がプライバシー権の侵害を理由として訴訟を提起し、インディアナ州の地方裁判所および高等裁判所はこれらの請求を認めた。こ れに対し、最高裁判所は、個人のプライバシー権の侵害は認めたものの、大学にはプライバシーの権利はないとして、その点については原判決を覆した。裁判所 は、大学は商標権侵害や不正競争防止法を根拠に訴訟を起こすべきと理由づけた。
<コメント>
Eメールアドレスのニックネーム部分は、早い者勝ちで自由に取得できるのが原則である。本件でも、他人に見せかけたEメールアドレスを取得しただけであればプライバシー権侵害は認められなかったであろう。
大学にはプライバシーの権利はないと明確に判示した点もこの分野では先例となろう。
<参考サイト>
Phillips Nizer Benjamin Krim & Ballon LLP
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Fraser v. Nationwide Mutual Insurance Co.135 F.Supp.2d 623 (E.D. Pa. 2001) |
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<要約>
雇用主が従業員の保存されている過去のEメールの内容を調査しても盗聴法(Wiretap Act)や電子通信プライバシー法(Electronic Communication Privacy Act , ECPA、インターネットをめぐる米国判例・法律100選<改訂版>97)違反にはならないとした事案。裁判官は、その理由として、「通信中の(in the course of transmission)」情報を傍受すれば上記の法に違反するが、既に通信が終わり保存されている情報を取得しても傍受には当たらないと判断した。
<コメント>
本判決でも、雇用主が従業員の保存されている過去のEメールの内容を調査するこ とは法律違反ではないが、倫理的には疑問があるとされている。会社としては、従業員の現在および過去のEメールが閲覧できるということを社内のコンピュー タ利用規程などで明記しておくべきであろう。
<参考サイト>
law.com tech law
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In re Doubleclick Inc. Privacy Litigation154 F.Supp.2d 497 (S.D. NY. 2001) |
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<要約>
Doubleclick社は、インターネット広告等を行う全米規模の会社であり、同社の顧客のウェブサイト上に利用者の好みに応じてバナー広告を配信す るシステムに関する特許を有していた(米国特許番号5948061)。このシステムは、クッキーを利用しており、同社の顧客のウェブサイト利用者のコン ピュータに情報が保存され、その情報が送信されるものであった。そこで、ウェブサイト利用者がDoubleclick社の本システムは、利用者に無断で利 用者の個人情報を利用するものであり、盗聴法(Wiretap Act)、電子通信プライバシー法(Electronic Communication Privacy Act , ECPA、インターネットをめぐる米国判例・法律100選<改訂版>97)、およびコンピュータ詐欺および濫用防止法(Computer Fraud and Abuse Act、同99)などに違反するとして集団訴訟を起こしたのが本件である。
判決理由は多岐にわたるが、Doubleclick社は利用者から直接ではなく、利用者が閲覧したウェブサイトの運営者から情報を取得しており、ウェブ サイトの運営者(同社の顧客)の同意は得ていること、利用者も Doubleclick社のウェブサイトでクッキーを利用しないという選択(オプトアウ ト)をするか自分のインターネット・ブラウザでクッキーを利用しないように設定できることなどを理由にウェブサイト利用者らの主張を全て斥けた。
<コメント>
判決は、Doubleclick社の顧客であるウェブサイト運営者の同意があったので個人情報取得も無権限でのアクセスではないとしてECPAの例外規 定に該当すると判断している。すなわち、通常のウェブサイトでクッキーを利用すること自体はECPAに違反しないと理解してよいであろう。
ただ、Doubleclick社の個人情報の利用の仕方は、個人情報保護との関係では問題がないとは言えないであろう。今後、米国でも個人情報保護関連 の法律が整備されれば、同社も新たな対応が必要となる可能性もある。
<参考サイト>
Phillips Nizer Benjamin Krim & Ballon LLP |
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