<判決日>
2002年1月14日
<裁判所>
カリフォルニア州控訴裁判所第1地区
<ポイント>
いわゆる迷惑メールの送信に関する規制を設けたカリフォルニア州法が合衆国憲法に違反しないと判断された。
<要約>
カリフォルニア州は、1998年、Business and Professions Code第17538.4条を修正し、いわゆる迷惑メール(unsolicited e-mail)の送信に関する規制を設けた。同条では、迷惑メールは、(1)今までに商売上または個人的に関係のない者に対して、(2)その者の要求や同 意なしに送信される広告を含んだメールと定義されている。そして、この迷惑メールには、(1)受領者がこれ以上メールを送らないように通知するためのフ リーダイヤルか返信メールアドレスを明記し、(2)このような通知が可能であることをメールの最初に明記し、(3)これ以上メールを送らないように求めた 受領者に対しては2度とメールを送ってはならず、(4)件名に広告であることを示す「ADV」を入れる(いわゆるアダルト関連のメールの場合には件名に 「ADV:ADLT」を入れる)ことが必要とされている。
原告Fergusonは、被告会社らが上記州法の要件を充たしていない迷惑メールを送信したとして訴訟を提起した。原審では、裁判所は、上記州法が連邦 議会しかなしえない州際間の行為を規制しており合衆国憲法に違反し無効であると判断した。これを不服として原告が控訴したのが本件である。
控訴裁判所は、上記州法は、インターネットそのものを規制するものではなく、(1)カリフォルニア州で事業を行い、(2)カリフォルニア州にある設備を 利用し、(3)カリフォルニア住民に迷惑メールを送信する者を規制するものであり、合衆国憲法には違反しないとして原判決を取り消した。
<コメント>
米国では、数年前から迷惑メールの規制の必要性が叫ばれており、連邦法の制定も 検討されたが、表現の自由や広告の自由などを理由として反対する勢力も強く連邦法は制定されていない。このような状況に対応するため、各州は独自のスパム メール規制法を制定しているが(イリノイ州法については、インターネットをめぐる米国判例・法律100選<改訂版>事例100参照)、本件と同様の合衆国憲法違反であるとの訴訟が各地で起こされている。ワシントン州法は、本件と同様、合衆国憲法違反ではないと判断されており(State v. Heckel (Wash.2001) 24 P.3d 404)、ニューヨーク州法は、合衆国憲法違反であると判断されている(American Libraries Association v. Pataki, 969 F.Supp. 160)。
<参考サイト>
law.com tech law
カリフォルニア州Business and Professions Code第17538.4条の原文