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3.知的財産権 |
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Metro-Goldwyn-Mayer
Studios, Inc. v. Grokster Ltd. (C.D.
Cal., April, 2003) |
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<判決日>
2003年4月29日
<裁判所>
カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所
<ポイント>
中央サーバーを持たないピア・ツー・ピア(Peer To Peer)技術を用いたファイル交換サービスを提供する行為が著作権侵害に該当しないとされた事案。
<要約>
本件は、映画や音楽の著作権を有する団体である原告らが、ピア・ツー・ピア(Peer To
Peer)技術を用いたファイル交換サービスを可能とするソフトウェアを提供していた被告らに対し、著作権の寄与侵害および使用者侵害を理由に提起した訴訟である。
このようなファイル交換サービスに関する訴訟としては、ナップスター事件が有名である。ナップスターは、利用者が無料ソフトウェアをダウンロードして、ナップスターのサーバーに接続することにより、他の利用者と音声ファイルを交換することができるようにしており、中央サーバーを管理し、そこに利用者の保有する音声ファイルのリストが保存していた。ナップスターの中央サーバーには、音声ファイル自体は保存されておらず、著作権の対象となる音声ファイルは利用者間で直接やりとりされるという仕組みであったが、連邦地方裁判所では、ナップスターの行為は、著作権の寄与侵害(他人の著作権侵害を助長する行為)に該当すると判断された。
本件被告らが提供していたソフトウェアは、中央サーバーを必要とせず、利用者は、同じソフトウェアをもってインターネットに接続している他の利用者と接続することにより、利用者間でファイルを交換し合うことができるものであった。被告グロックスター(Grokster)が提供していたのは、カザー(Kazaa)というソフトウェアの自社ブランド版であり、被告ストリームキャスト(StreamCast)が提供していたのはヌーテラ(Gnutella)の自社ブランド版、モーフェウス(Morpheus)というソフトウェアである。
本裁判所も、ナップスター事件と同様、グロックスターとモーフェウスの利用により、著作権侵害のファイル交換が行われていることは認めた。しかし、裁判所は、寄与侵害が認められるためには、被告らが直接侵害行為を知っており、その特定の侵害行為を中止することができることが必要だと述べた。原告らは、被告らに対し、被告らのサービスにより違法コピーが行われているので中止するように通知したと主張したが、裁判所は、その通知を受けた時点では、既にその著作権侵害行為は終了しており、被告らは、その違法コピーを止めることはできなかったと認定した。また、裁判所は、使用者侵害が認められるためには、被告らが侵害行為を監督する権限と能力を有することが証明されなければならないとして、この点についても著作権侵害を否定した。
<コメント>
本判決が重視したのは、グロックスターとモーフェウスがナップスターと異なり、中央サーバーを持っておらず、利用者がファイルを交換し合うことについて、何らの手助けもしていないという点である。被告らは、中央サーバーを持っていないので、被告らがサービスを停止したとしても、既にソフトウェアをダウンロードしている利用者らは、継続して、ファイル交換サービスを続けることができることになる。
被告らは、違法なファイル交換に利用されるかもしれないソフトウェアを提供し、広告料として利益も得ているのですが、これは、違法コピーに利用されるかもしれないコピー機やビデオデッキを販売している行為と違いがないという判断であり、1984年に下されたソニー事件を引用している。ソニーの家庭用ビデオデッキが販売された当初は、録画したビデオテープが第三者に売られて著作権侵害が起こっているとして、ソニーが提訴されたが、米国最高裁は、家庭でテレビをビデオ録画する行為は、フェアユースであり著作権侵害に該当しないのであり、このような利用も多くされている以上、ビデオデッキを販売する行為も著作権の寄与侵害に該当しないという判決を下した。この判決により、今日、我々は、家庭でビデオ録画を楽しむことができるようになっているとも言えるのであり、利用者間における直接のデーター交換を可能にする素晴らしい技術であるピア・ツー・ピアも、今回の判決により、将来、我々が当たり前のように利用できるようになったと言われるのかもしれない。
<参考サイト>
判決文 |
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Kelly
v. Arriba Soft Corp. 2002
WL 181351 (9th Cir.(Cal.)) |
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<判決日>
2002年2月6日
<裁判所>
第9巡回連邦控訴裁判所
<ポイント>
画像検索サイトが検索された他人の画像のサムネイル版を表示することはフェアユースと認められ、著作権侵害に該当しないが、元の画像にリンクを張り、これを自社のサイトのフレームの中に表示することはフェアユースとは認められず著作権侵害になる。
<要約>
被告(被控訴人)Arriba Soft社は、自動巡回機能をもつ画像サーチエンジンを用いて画像検索サイトを運営していた。被告サイトの機能は、大きく2つあり、@検索された画像のサムネイル版を作成し、これを一覧表示することとAこのサムネイル画像をクリックすることにより元の画像にジャンプできることであった。Aのリンクは、リンク先のサイトを自分のサイトの枠内に表示するいわゆるフレームという方法が用いられており、利用者は、被告のサイト内であるかのような誤解を招くものであった。原告(控訴人)は、プロの写真家であり、撮影した写真を自己のサイトに掲載していた。
原告は、自己の写真が被告のサイトに掲載されていることを知り、著作権侵害であるとしてカリフォルニア州中央地区の連邦地方裁判所に提訴したが、裁判所は、被告の利用方法は、フェアユースに該当し、著作権侵害は成立しないと判断した。これを不服として原告が控訴したのが本件である。
控訴裁判所は、サムネイル版は元の画像に比べて小さく画素数も低いので、利用者がこれをコピーしたり拡大して利用したりする可能性は低いとして、@の行為はフェアユースに該当すると判断した。しかし、元の画像に直接リンクし、これを自社の広告等を載せたサイトの中にフレームとして取り込むことは、フェアユースの範囲を超えているとして、Aの行為は著作権侵害に該当すると判断した。
<コメント>
通常の検索サイトが検索されたサイトの一部をテキストで表示することは著作権侵害と考えられないであろう。それと同様に画像検索サイトが検索されたサイトの画像をサムネイル版で表示することも著作権侵害とならないと判断されるのも妥当であろう。
他人のサイトへリンクを張ることは著作権侵害に該当しないと考えるのが通常であるので、画像を含む他人のサイトへリンクを張ることも著作権侵害に該当しない。上記Aの行為が著作権侵害とされたのは、フレームを行ったことが原因である。
<参考サイト>
Imaging
Resource
BNA's
Patent, Trademark and Copyright Journal (原審判決)
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Amazon.com,
Inc. v. Barnesandnoble.com Inc., 239
F.3d 1343 (Fed.Cir. 2001) |
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